『納得屋』

・悠と良仁

良「私が会長とした『取引』というのは、『リンゴカフェの企画が成功したらあの土地を諦めてもらう。でも、企画が失敗したらあの土地は買収する。そして、企画を進めている最中に莉子と離婚しても土地を買収する。』というものです。」
悠「なるほど。でも、なぜ良枝はそこまで土地にこだわっているんですか？」
良「近々あの近くに大型ショッピングモールができるという話があるんです。それで、その近くである莉子の実家のリンゴ園を買収して娯楽施設を作ると言い始めたんです。でも、まだ話もまとまっていなくて、近隣の準民からの反対もあり、確実にできるというわけではないんです。」
悠「そんな状態なのに、土地を欲しがっているんですか？」

悠は信じられないというようにそう言った。

良「はい、お恥ずかしい限りですがうちの会長には経営センスが全くないんです。それに、前社長…私の父が急に病で亡くなり、会長が父に代わって社長についた時からOSTの経営が年々ひどくなっていく中で焦っているんだと思います。」
悠「そうですか。あの現会長は元社長で、岡村さんが社長になるときに会長になったということですか？」

悠は話の中で見つけた疑問点を良仁に聞いた。

良「はい。OSTは父が大きくしたんです。祖父は父が会社を改革している途中で亡くなったのでずっと会長不在のままだったんです。父も会長になる前にこの世を去ってしまったんですけどね。」

良仁は悲しそうにそう言った。