崩壊

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そんなことを思い出しながら扉を開いたとき。 おじいちゃんの用務員さんが出てきて、優しく微笑んでくれた。 「あぁ、転校生だね。田中先生を呼ぶから、ちょっと待っててね」 ほわっとした用務員さんは、奥へ歩いていった。 しばらくすると、男の、背が高い先生が歩いてきた。 「やあ、待たせたね。ピンクのランドセル、可愛いね」 ニコッと笑って、ランドセルを誉められた。悪い気はしなかった。 何せ、六年前、私の母が方々探し回って、当時では珍しい、パールピンクのランドセルを買ってくれたのだから。 「卒業まであと少しだけど、一緒に頑張ろうね」 そう言ってくれた田中先生に、後ろめたさを感じた。 一緒、に… 担任にいじめられた、という事実は、自分でも気付かないうちに、心に深い傷を負わせていた。 返事をしなかった私に、田中先生は何も言わなかった。 母から話を聞いているのだろう。 その優しさが、嬉しかった。 「うちのクラスの連中には、気を引きしめてかかれよ」 いたずらっ子のような笑顔を浮かべた田中先生に、?という表情をしたが、意味はすぐわかった。
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