-序章 崩れる日常-

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友也は驚く素振りも見せずに俺の方を見た 「やっぱりここにいたか」 ここは屋上 友也と幸子の思い出の場所 俺は大きく深呼吸して息を整える 「一人にしてほしい…」 「嫌だ」 俺は即答する 「何で?」 「お前…死ぬ気だろ?この、幸子との思い出の場所で」 「やっぱり、お前にはお見通しだな…」 「やっぱりな…」 「死なないと後悔することになる… まだ、傷が浅い内に死なせてくれ」 「ここでお前を死なせたら俺が後悔する…さぁ、教室に戻ろう」 俺が一歩進む すると、友也が一歩後ろにさがる 「来るな…」 静寂が流れる その静寂を破ったのは雷鳴だった 「雨が降るぞ…さぁ、教室に戻ろう」 友也は悲しそうな顔をして俯いている その時、一粒の雨が俺の顔に落ちた 「雨だ…さぁ、戻るぞ」 俺は友也に手を伸ばしながら一歩ずつ近付いていく 一歩 また、一歩 友也が手を伸ばせば届く距離まで来た 「戻ろう…」
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