タイムトラベル

3/24
前へ
/58ページ
次へ
 ああ、しまった。私は涙を流す。  こいつ、幽霊だ。  私、岩田 武(いわた たける)はとてつもなく霊感が強いらしい。呪いの類ならお手のもの、幽霊なんて見えて当たり前、男のような名前&ガンダムというあだ名と、幽霊に悩むか弱い少女18歳、大学生である。  因みにガンダムというあだ名は岩(がん)田(た)武(む)からきている。というのはどうでもいい話。そして私が呪いをかけようとしていた相手は、私をガンダムよばわりし、陰険と罵る小憎たらしい兄だ。  「お前…何者だ」   突然時代劇の格好をした幽霊に話しかけられ、「は…はいぃ?」と声を裏返しながら私はどうにか言葉を出す。  名前なんて名のるわけにはいかない。名前を知られればやつらは私たちを好きに出来る。こちらもまたそれは同じ。  「答えられぬか。人の子風情が」  「が…ガンダム!!」  「ほう。ガンダムか。奇抜な名前だな」  んなわけないでしょ、このタコすけ、と心の中で悪態をつく。焦ってしまって、つい聞かれたくもないあだ名を口走ってしまった。かと言って言わなきゃこの場で呪い掛けられそうだ。  それにしてもこいつ、やっぱりこの時代の幽霊じゃない。服といいガンダムを知らないことといい、何世紀離れてもこの世に残った怨念なんだろう。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加