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ああ、しまった。私は涙を流す。
こいつ、幽霊だ。
私、岩田 武(いわた たける)はとてつもなく霊感が強いらしい。呪いの類ならお手のもの、幽霊なんて見えて当たり前、男のような名前&ガンダムというあだ名と、幽霊に悩むか弱い少女18歳、大学生である。
因みにガンダムというあだ名は岩(がん)田(た)武(む)からきている。というのはどうでもいい話。そして私が呪いをかけようとしていた相手は、私をガンダムよばわりし、陰険と罵る小憎たらしい兄だ。
「お前…何者だ」
突然時代劇の格好をした幽霊に話しかけられ、「は…はいぃ?」と声を裏返しながら私はどうにか言葉を出す。
名前なんて名のるわけにはいかない。名前を知られればやつらは私たちを好きに出来る。こちらもまたそれは同じ。
「答えられぬか。人の子風情が」
「が…ガンダム!!」
「ほう。ガンダムか。奇抜な名前だな」
んなわけないでしょ、このタコすけ、と心の中で悪態をつく。焦ってしまって、つい聞かれたくもないあだ名を口走ってしまった。かと言って言わなきゃこの場で呪い掛けられそうだ。
それにしてもこいつ、やっぱりこの時代の幽霊じゃない。服といいガンダムを知らないことといい、何世紀離れてもこの世に残った怨念なんだろう。
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