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『ただいま。』
そう言って僕は夕日に照らされた君の部屋を訪れた。
君からの返事はない。
僕はいつもの席に腰かけると、君の髪を撫でる。
『今日ね、会社で上司に呼び出されてさ。
…僕ボストンに転勤になったんだ。』
口が渇いているのがわかる。
いざ言葉にすると、それがどれだけ恐ろしいことか実感したような気がした。
君からの返事はない。
『いつこっちに帰ってこれるかわからないんだけどね…』
そう言って僕は窓の外の夕日を眺める。
こんなことを言う僕を君はどう想うのだろうか?
ずっと一緒にいると約束したのに、それを破るなんて最低と、愛想を尽かしただろうか?
いや違うだろう。
ずっと君と一緒にいた。
だから君がなにを考えてるかなんてすぐわかっちゃうんだ。
君ならこう言うだろう。
“いってらっしゃい。気をつけてね。”
と。
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