運命と言わずなんと言う

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芝生ばかりで、お年寄りたちの散歩コース的な場所。 なのに今日はまるで違って見える。 新鮮な空気をたっぷり吸い込んで、緊張で跳ね上がっている心臓をなんとか落ち着かせようとする。 そんな俺はいつも以上に挙動不審なわけで、彼女はくすくすと笑いながら登場した。 「何やってるんですか?」 それはくしくも可愛らしい笑い方だったので余計に恥ずかしい気がする。 「いや、ちょっと、空気を体内に取り込んで、ました」 ふふっ、と可笑しそうに笑う彼女もやはり胸にズバンときた。 「えーと、いきなり呼び出してしまいごめんなさい。来てくれてありがとう」 「いや、こちらこそありがとう」 というように、最初のうちは会話のキャッチボールが成り立たなかったが、趣味の話になると俄然ヒートアップした。 趣味というのは、他でもない「本」である。 「君、どんな本読むの?」 世間話で盛り下がり始めた頃、彼女が不意に問い掛けてきた。 「え……あ、いや、どうだろう」 「結構本屋来てるよね。だから気になっちゃって。勿論興味本位だし、言いたくなかったらいいんだけど」
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