運命と言わずなんと言う

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以前付き合っていた彼女、これは俗に言う彼女のことだが、彼女は聞き上手だった。 毎日話すのが楽しかったし、うんうんとにこにこ笑いながら聞いてくれる彼女は優しくて愛しかった。 俺は意外にも社交的で、誰とでもある程度は仲良くなれたし、人気者的な位置は満更でもなくて気に入ってたが、ふと一人になると孤独だった。 それでよく、図書館に行って本、とりわけ物語を読んだ。 自分が主人公の脇から、客観的に眺めるのはひどく新鮮で、居心地の良さを見いだしていた。 出会ったのは何回か図書館に通っていた時だ。 俺はやたら集中力があり、一度本を読み出すと止まらないし、周りの音にも気が付かないほどである。 一冊読み終わって一息つくと、目の前に座っている人物が、いきなり腰を浮かせて俺に話しかけてきた。 「私、花岡菜々美です!北沢凪くん……だよね?」 俺は人気者の必要事項として、クラスメートを全員覚えていた。だから彼女のことも知っていたので少し焦った。図書館通いのイメージは自分に合わないからだ。 それでも、すぐに取り繕ってにこりとしながら、 「偶然だね、花岡さん」 とさり気なく呼ぶ。 相手は自分を知られていることに対して、居心地のよさを感じるものなのだ。 案の定、彼女は嬉しそうに微笑んだ。 それから少しクラスのこと等を話して別れた。
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