運命と言わずなんと言う

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忘れた頃に今度は学校で話し掛けられた。 「き、北沢くんっ」 俺は少し意外に思いながらも、染み付いてしまった笑顔を向けて、「どうしたの?」と訊ねた。 花岡さんは、はにかんだように笑い返し、用を切り出した。 「あの……今日って図書館に行く?」 「え?」と、思わず声をもらしてしまうほど驚いた。 彼女の方もそれに驚いたようで、ごめんなさい、と謝られる。 俺はすぐに冷静さを取り戻して、 「行かないよ、そんなに行ってる訳じゃないし」 と取り繕う。内心ヒヤヒヤなのだが。 「そうだよね。私が行くとよく見かけるからちょっと気になって」 ん?ちょい待って。よく見かける? 「だから、もし良かったら一緒に行かないかなって思ったの」 俺はかなりのあほ面だったと思う。 それに気付くことなく、俺を図書館に誘った彼女もそれ以上にあほだが。 ま、可愛かったんだけどさ。
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