0人が本棚に入れています
本棚に追加
忘れた頃に今度は学校で話し掛けられた。
「き、北沢くんっ」
俺は少し意外に思いながらも、染み付いてしまった笑顔を向けて、「どうしたの?」と訊ねた。
花岡さんは、はにかんだように笑い返し、用を切り出した。
「あの……今日って図書館に行く?」
「え?」と、思わず声をもらしてしまうほど驚いた。
彼女の方もそれに驚いたようで、ごめんなさい、と謝られる。
俺はすぐに冷静さを取り戻して、
「行かないよ、そんなに行ってる訳じゃないし」
と取り繕う。内心ヒヤヒヤなのだが。
「そうだよね。私が行くとよく見かけるからちょっと気になって」
ん?ちょい待って。よく見かける?
「だから、もし良かったら一緒に行かないかなって思ったの」
俺はかなりのあほ面だったと思う。
それに気付くことなく、俺を図書館に誘った彼女もそれ以上にあほだが。
ま、可愛かったんだけどさ。
最初のコメントを投稿しよう!