運命と言わずなんと言う

16/18
前へ
/35ページ
次へ
と、思ってたのにな。それは一方通行だったらしい。 「凪、私とは本の話しかしないよね」 ちょっとした喧嘩からそう言われて。 「他の子とは楽しそうに雑談してるのに、私には本!本!本!……なんで?私に興味なくなったならそう言ってよ!」 激しく責め立てる声は、今まで知らなかった彼女で。 俺は呆然としながら、ごめん、と一言。 だってさ、他に何て言えば良いんだよ?心を許してるから俺は本音を話してて、本読むのもマジな趣味で、格好悪いかもしれないし地味だけど、好きな気持ちを話してたんだ。 それが彼女には伝わってなかった。 自分勝手に本のことを話しまくる男だった。 何でわからないんだよ。 そんな怒りよりは哀しみが湧き上がった。 哀しみよりも、自分への嘲りと憐れみが勝っていた。 簡単に信じすぎだっつの。 人間(ひと)を信じて裏切りを知ったから、人気者の位置を陣取ってたのに。 それでも……人間(ひと)を信じたかったんだよな。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加