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ただいま、と退屈そうなテレビを楽しそうに観る二人に声をかけた。
一瞬誰かわからなかったらしく、大袈裟なくらい驚いて、その後温かな「おかえり」に迎えられた。
「全く凪ったら、全然顔見せに来ないんだから」
拗ねたように呟くのは母さん。
「そうだな」
子供っぽい姿を見せる母さんに呆れながらも、微笑む父さん。
40も越えるのに、なんだかんだ愛しあってるのがわかる。子供である俺としては結構気恥ずかしいのだが、羨ましくもある。
「なんかおやつない?」
勇がひょいと後ろから顔を出す。
「あら勇、バウムクーヘンならあるわよ?丁度いいから、ここでみんなで食べましょ」
にっこりと微笑む母さん。
だが、相談事があるという勇は煮え切らない様子で、ええー、でも、ともごもご言っている。
俺としてはゆっくりおやつでもいいのだが、可哀想なので助け船を出す。
「こいつ宿題あんだってさ、俺が折角帰ってきたのに。だから部屋で教えるから持ってって食べて良い?」
可愛い弟の頭をぽんぽん叩きつつそう言う。
「えっ、あ、ば、バラすなよ!」
本気で焦ってるし。随分用意いいんじゃねぇか。
母はあからさまにがっかりしたようだが、
「しょうがないわね~」
と大きく切ったバウムクーヘンを珈琲といっしょに渡してくれた。
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