家族と俺と友人と

9/14
前へ
/35ページ
次へ
ただいま、と退屈そうなテレビを楽しそうに観る二人に声をかけた。 一瞬誰かわからなかったらしく、大袈裟なくらい驚いて、その後温かな「おかえり」に迎えられた。 「全く凪ったら、全然顔見せに来ないんだから」 拗ねたように呟くのは母さん。 「そうだな」 子供っぽい姿を見せる母さんに呆れながらも、微笑む父さん。 40も越えるのに、なんだかんだ愛しあってるのがわかる。子供である俺としては結構気恥ずかしいのだが、羨ましくもある。 「なんかおやつない?」 勇がひょいと後ろから顔を出す。 「あら勇、バウムクーヘンならあるわよ?丁度いいから、ここでみんなで食べましょ」 にっこりと微笑む母さん。 だが、相談事があるという勇は煮え切らない様子で、ええー、でも、ともごもご言っている。 俺としてはゆっくりおやつでもいいのだが、可哀想なので助け船を出す。 「こいつ宿題あんだってさ、俺が折角帰ってきたのに。だから部屋で教えるから持ってって食べて良い?」 可愛い弟の頭をぽんぽん叩きつつそう言う。 「えっ、あ、ば、バラすなよ!」 本気で焦ってるし。随分用意いいんじゃねぇか。 母はあからさまにがっかりしたようだが、 「しょうがないわね~」 と大きく切ったバウムクーヘンを珈琲といっしょに渡してくれた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加