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ため息をついた直後、
「すみません、遅くなりました」
と綺麗な声が耳に届いた。
落胆した様子を見たからだろうか、
「お急ぎでしたか?」
と聞かれてしまった。
俺は慌てて全力でかぶりを振る。
「そんなことないです!ただかなり楽しみだったんで、待ちきれなくて!」
慌てすぎた。後から思えば浮かれてたのだと一発でわかる。
意外にも彼女は笑った。営業的な笑みじゃなくて、本当に嬉しそうに。
「わかります、私もこの本大好きだから」
後から思えばその二。この笑顔にやられた。
「あ、ポイントたまってますね。使います?」
俺はいつもはポイントのたまらない半端分を使うのだが、若干躊躇した。
いじきたないと思われるか……?
「60ポイント使います?どうします?」
後から思えばその三。これはやばい。
俺はこくこくと頷いて、ついでにブックカバーを頼んだ。
わかりました、と手慣れた様子で本は包まれた。
「ありがとうございました」
受けとる時、何気なく口にした言葉が彼女とハモリ、お互い気恥ずかしくて笑ってしまった。
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