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「ありがとうございましたー」
いつも通りのマニュアル化された店員の言葉を、背中に浴びながら俺はコンビニを出た。
ふと見た腕時計の針はもうすぐ午後10時を指そうとしていた。
「…眠い」
俺はビニール袋を前のカゴに入れた後、自転車にまたがる。
そのままペダルをこいで、グングンと闇を駆け抜ける。
「あの頃は可愛かったのに…」
あの頃とは俺がまだ中学生で京子が小学生だった頃だ。
「にぃにぃ!!遊ぼー!!」
と無邪気に俺に抱きついてきたもんだ。
それはなんだ今じゃ…
「兄ちゃん飯買ってきて」
女の子ってここまで変われるものなのか?
妹が不良になり始めたのは確か、俺が高校に入学してからだ。
中学生になった京子は、いきなり髪の毛を金髪に染め上げ、高そうなブランド品を父親に買いまくってもらっていた。
父親もバカだから喜ばれるたびに買ってあげていた。
普通は髪を金髪に染めた時点で怒るべきであろう父親が京子に手玉に取られてしまっている。
ふざけた話だ。
でも俺はそんな京子を羨ましく思っていた。
親になんでも買ってもらえるから?
夜遊びOKだから?
ちがう。
京子はいっぱい友達がいたからだ。
友達のいない俺と比べて京子はたくさん友達がいた。
なんでみんなアイツの事好きなんだろう?
俺がもし京子と同級生なら絶対友達にならないんだが。
とか友達がいない俺が言ってもなんにもならない。
「虚しい」
俺は半分涙目になりながら、自転車で近くの公園を通り過ぎようとした。
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