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俺が「鉄アンナ」と初めて出会ったのは、ジメジメと蒸し暑い夏の夜の事だった。 「鉄」と書いて「くろがね」 あまり女の子らしくない名字だが、彼女自身の容姿は本当に美しく、鉄というよりは、柔らかくすぐ潰れてしまう粘土のような少女だった。 「~だった」と語尾が過去形のようになってしまうのは、実はこの少女はもうこの世に存在しないからであることを分かってほしい。 俺は彼女を救うことが出来なかった。 この物語には、英雄も、癖のある悪者も、味のある脇役も、変な口癖をもつキャラ付け意識の強い美少女も登場しない。 これは1人の少女が、奇妙で不可解な能力を手にしてから処刑されるまでの救いようのない物語。
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