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いつの間にかおねーさんの手に、制御装置の腕輪がはめ直してある
「た、助けていただき、本当にありがとうございます!」
彼――司祭さんに深々とボサボサになった頭を下げる愛流ちゃん。司祭さんは微笑んで
「いえお嬢さん、どうやら私達の〝家族〟が迷惑を掛けたようだ。お詫びをしないといけないのは此方ですよ」
「い、いえあの3人組に捕まっちゃったのを、どうにかしようとしてくれたんですよ!」
「いえ司祭様!それ以前に、絡まれていた私を助けてくれたのがこの子達で!」
愛流ちゃんの弁解に慌てて間に入ったのは、おねーさん
「そうなのですか?お嬢さん」
「その……当然の事をしたまでで…」
「ううん。ちゃんとお礼をさせて」
尚も「いいです」「いいから」と続ける2人
「何て出来たお嬢さんだ」
そこに目を閉じ、感じ入った様子の司祭さんが加わる
彼は愛流ちゃんの手を取ると、優しく微笑みかけた
「見ず知らずのこの子に手をさしのべ、見返りも求めない……お嬢さん、名前を聴いても宜しいかな?」
「か、神無月 愛流です」
「愛流さん。貴女の善き行いは、我らが神も見ていて下さっている事だろう。どうだろうか、正式にお礼と謝罪がしたい。私達の教会に招待――」
「ねぇ。司祭さんは何て名前なんですかぁ?」
「ひ、ひかるちゃん?」
ぐいぐい攻めてくる司祭さんと、愛流ちゃんの間にボクは笑顔と声とを割り込ませ、離れさせる
司祭さんは一瞬面食らったみたいだけど、すぐに笑顔に戻し
「礼儀を欠いてしまったね。私は【上士幌光輝】近くの教会で司祭職を務めているんだよ」
「ごてーねーにどうも!ボクは四月一日(ワタヌキ)です」
ボクも負けじと、笑顔で対応する
「勿論。キミにも一緒にお礼をしたい。私達の教会に招待してもよろしいかな」
「えと……」
「お断りしまっす」
「……」
愛流ちゃんが何か言う前に、被せてキッパリと言い放す
その場の空気は、ちょっと固まった気がするけど
「えっと。今日、都合が悪いなら後日でも」
おねーさんが場を取り繕うように口を挟む
う~ん。でもそうじゃ無いんだよ
「ごめんね、おねーさん。愛流ちゃんが言った通り大した事はしてないし、何より」
「あは。笑顔がきれい過ぎる人は信用しないようにしてるんで」
最高の笑顔で、ボクはそう告げた
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