ヘクト地方ポール雪原

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嫌な音が耳朶を突いた。ハッとしたベラが踵を返してオレの前に立ちふさがる。 『走って。真っ直ぐ行ったら絵があるわ。その裏に通路があるから、奥に隠れて』 「ベラはどうす……」 『はやくいって!』 「っ……!」 誰かに腕を引っ張られてオレは目を見開く。そこにはエル神父が立っていた。 『はやく、ルーシが食い止めている間に来なさい!』 「ベラ一人なんですか!?」 『神父さま。キジョウをはやく奥に』 「っ、ベラ!」 か細くて小さな背中がみるみる小さくなっていく。半ば引きずられる形で、オレは絵の裏にある通路に押し込められた。 『キミはここに居なさい。ルーシの許には私が行く』 「エル神父っ!」 エル神父は絵を元に戻すと何やら言葉を呟く。それが終わると同時にどこかに走りだす音が聞こえた。足音が聞えなくなり、オレは絵を叩いた。 「ベラ!エル神父!」 だんだん、と叩くのだがびくともしない。あんな簡単に取れたのに、なんでこんなに叩いても外れないんだろう。力を込めて叩いても、拳が赤くなっても、痛いと感じることはなかった。 そして、オレは叩くことを止めた。 ゆっくり目を閉じて、そのまま意識を手放したのだ。
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