12人が本棚に入れています
本棚に追加
嫌な音が耳朶を突いた。ハッとしたベラが踵を返してオレの前に立ちふさがる。
『走って。真っ直ぐ行ったら絵があるわ。その裏に通路があるから、奥に隠れて』
「ベラはどうす……」
『はやくいって!』
「っ……!」
誰かに腕を引っ張られてオレは目を見開く。そこにはエル神父が立っていた。
『はやく、ルーシが食い止めている間に来なさい!』
「ベラ一人なんですか!?」
『神父さま。キジョウをはやく奥に』
「っ、ベラ!」
か細くて小さな背中がみるみる小さくなっていく。半ば引きずられる形で、オレは絵の裏にある通路に押し込められた。
『キミはここに居なさい。ルーシの許には私が行く』
「エル神父っ!」
エル神父は絵を元に戻すと何やら言葉を呟く。それが終わると同時にどこかに走りだす音が聞こえた。足音が聞えなくなり、オレは絵を叩いた。
「ベラ!エル神父!」
だんだん、と叩くのだがびくともしない。あんな簡単に取れたのに、なんでこんなに叩いても外れないんだろう。力を込めて叩いても、拳が赤くなっても、痛いと感じることはなかった。
そして、オレは叩くことを止めた。
ゆっくり目を閉じて、そのまま意識を手放したのだ。
最初のコメントを投稿しよう!