ヘクト地方ポール雪原

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暫く歩みを進めていくと、吹雪に紛れて橙の光が見えてくる。 長くて最初はビルかなと思ったけど、内陸部に住むオレにはなかなかお目に掛かれない灯台だった。てっぺんには吹雪に煽られ今にも消えそうな火が灯っている。 灯台があるということは、海が近いからだろう。なのにこの大雪とはどういう了見だ。しかし効率悪いな、あの火。 『あなた……』 「は?」 鈴のような声に呼び止められて、振り向けば立っていたのはオレと同い年くらいの少女。 夢は妄想の表れとか言うけど、オレにこんな可愛い少女を妄想する力があったとは知らなかった。 白くフリフリのワンピースを身に纏い、赤いリボンとブーツが雪景色によく映える。大きくて真ん丸とした色素の薄い瞳に、髪に、肌。まるで彼女は雪だ。 あ、なんかオレ詩人ぽいじゃん。秘めたる才能開花ってやつ?
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