ヘクト地方ポール雪原

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無表情が第一印象的だった。こんな風に笑える奴なんだな。 盗み見していた視線をエル神父に戻して、オレは空になったカップを机に置いた。 お代わりを尋ねられたものの、申し訳なさから首を横に振る。 またその申し訳なさそうな態度がおかしかったのか、エル神父は笑顔をたたえて空になったカップを下げていった。 『キジョウ君、今日はここに泊まっていきなさい』 「え、でもそれは……」 『遠慮することは無い。ここには身寄りのない子供たちが沢山居るからね。今更1人2人増えたところで変わらない』 「身寄りのない子供たちですか……?」 ベラをちらっと見やれば、憂いを帯びた瞳が目に入る。ぎょっとしたものの、こんな時に掛ける言葉が浮かばずエル神父に助け船を出した。 『……私、子供たちと遊んできますね』 『ああ、頼むよルーシ』 ベラが二階に上がっていくのを確認したエル神父は、オレの方に向き直った。 無意識に背筋が伸びる。 なんだか「娘さんを僕に下さい!」といいにきた、どこかの馬の骨のような気分になった。なったことは無いが、こんな感じだろう。
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