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「ここか、」
人通りの多い交差点に、突然時空を裂いて出て来たかのように、酷くその場に不似合いな少年がかつり、と靴音を立てて舞い降りた。
チェックの柄をしたシャツにネクタイ、更にはベストもかちりと着こなしている。身長が低い割にはその表情は嫌に大人びていた。
「トーナ、」
赤と白の帽子――俗にいうサンタクロースの帽子を持っていた少年は、それを膝丈のズボンのポケットに突っ込んだあと、きょろきょろと周りを見回し、小さく名前のようなものを呟いた。人混みの中のその声は、掻き消されてしまったのにも関わらず、シャランと小さな鈴の音がして、小さな女の子が少年の目の前に、急に現れた。にこにこと、ツインテールを揺らしながら微笑んでいる。
「ニコラさま。」
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