とある訪問者

2/4
前へ
/9ページ
次へ
「ここか、」 人通りの多い交差点に、突然時空を裂いて出て来たかのように、酷くその場に不似合いな少年がかつり、と靴音を立てて舞い降りた。 チェックの柄をしたシャツにネクタイ、更にはベストもかちりと着こなしている。身長が低い割にはその表情は嫌に大人びていた。 「トーナ、」 赤と白の帽子――俗にいうサンタクロースの帽子を持っていた少年は、それを膝丈のズボンのポケットに突っ込んだあと、きょろきょろと周りを見回し、小さく名前のようなものを呟いた。人混みの中のその声は、掻き消されてしまったのにも関わらず、シャランと小さな鈴の音がして、小さな女の子が少年の目の前に、急に現れた。にこにこと、ツインテールを揺らしながら微笑んでいる。 「ニコラさま。」 .
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加