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「参りましょう。新しいお家は用意してありますのよ。」
くりくりとした団栗眼、ひらりと揺らすフリルたっぷりのワンピースには似合わない、丁寧な言葉遣いだった。少年はふん、と偉そうに鼻を鳴らした後に、早くしろ、と少女に先を促す。少女は少年に怒りの感情も表さず、むしろ当然のことであるかのようにもう一度、にこりと笑った。
「すぐにお迎えが参ります。もうしばらく、」
少女の台詞の途中だった。交差点の横断歩道のど真ん中、今だ動かずにいた二人の前。周りの人間達のつんざくような甲高い声の後に、キキィィィと鳴り響くブレーキ音。スライドして綺麗に横に止められた車に、二人は驚くこともなく。少年の銀色の髪がさらりと揺れた。
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