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「遅刻だ、馬鹿者。」
吐き出すように言った少年の言葉に、黒塗りの上質だと思われる車のウインドウが下ろされる。そこには、漆黒の髪を後ろにぺたりと押さえ付けた髪型の二十代前半と思われる男が、ニヒルな笑みを浮かべていた。
「へいへい。ニコラ様は神経質だねぇ。」
「カイ、失礼はおやめなさい。この方は―――」
少女が口を開く。人々は再び歩道を闊歩し、少年と少女は車に乗り込み、その場を去ることとなった。
その場に残されたのは、少女が車に乗り込む前に呟いた言葉ひとつ。
「ニコラオス国第32代、サンタクロースなのですから。」
その言葉を聞いていた青年が一人、振り返った先に怪しい三人組はいなかった。
01.風に攫われた序章
(少年の靴音が始まりを既に意味していたのだ)
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