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「ゆーんー、見てみィよォ。」
にやにやと笑うトモの、ピンクのマニキュアを塗った指が指した方を見る。ゆん、と昔からのあだ名を気にするのは今はやめておこう。
目を向けた先には、スクランブル交差点の横断歩道に突っ込んだような形の、リムジンが一台。こちら側からは中の人間は見えないけど、きっとすごく男前な人なんだろうな。
「何あれェ、やばくなァい?見たいなァ。」
お前は女子か、と思うテンションの喋りに苦笑いをすると、たたたーっと無邪気な子供のようにそちらの方へ走っていってしまった。はぁ、と毎度よろしく彼の好奇心のすごさに、思わず溜息をついて、そのブレザーから中のセーターがはみ出した背中を追い掛けた。
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