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「ゆーんー!何かサワに会ったァ。」
そう言ってゆるゆると近付いてきた。ピンク色の指先が、もう一人後ろにいた男のブレザーの裾をちょこんと掴んでいた。その後ろにいたのは、無駄に爽やかな笑顔の我が校の野球部主将。
というかトモ。お前はもう目的を失ったのか。相変わらずの飽き性だな、と溜息。とりあえず目の前の長身な彼に目を向けた。
「大澤・・・?」
何で、ここに。小さく呟いたらまた爽やかに笑われて。
「ただの部活帰り。我妻(あづま)達こそ、帰り遅いんだな。」
「オレ等はただのゲーセン帰りだよォ。」
俺の代わりに答えるトモが、相も変わらずひゃひゃ、と顔に似合わないように笑う。
何も変わらない日常の中の楽しげな二人の会話は、俺の頭に入ることはなく、先程までの出来事に脳は囚われたままだった。
02.日常に垣間見た非日常
(振り返った先の夕闇の赤に囚われそうになった日)
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