4.目が覚めるまで

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  『さぁ!本日も盛り上げるのはー、やっぱりこの人!!!』 どこからともなく聞こえてきたのは、マイクを通した大きな声と爆音の音楽。どちらも鳴り響いたのが突然だったので、体がビクッと跳ねる。 そのアナウンスとほぼ同時に、私達の席にぞろぞろとホストが集まってきた。そのうちの数人は、大きな入れ物とグラスを抱えて。   大きな入れ物は、バケツの持ち手を無くしたような...。バケツはどうかと思ってぐるぐると考えるけど、結局バケツ以外に出てこない。 沢山の氷にボトルが埋まっている、ゴトッと鈍く重い音を立てながらテーブルにおろされた。 いつもビールを飲んでいるグラスではなく、シャンパングラスが目の前に並ぶ。 集まった中のマイクを持った人が、その準備の最中も続けて話していた。 『我等がClub Ship!No.1!セイラさんのお姫様からー!カフェ・ド・パリ、7本頂きましたー!』『ありがとーございまーすっ!』マイクの人の後に、その場にいたホスト全員が叫んだ。応援団のような、お祭りのような、威勢のいい声。 そしてその直後に、突然始まるダンス。ダンス、というよりかは...振り付け付きの掛け声のような。 鳴り止まない爆音の音楽に合わせて、彼等の振りと掛け声が時たまセイラさんと梨那に向けられる。『やっぱりコイツがNo.1!』の所ではセイラさんが指を刺され、『素敵な素敵なお姫様!』の所で手を向けられる梨那。 一通りの流れが終わったのか、音楽と振り付けが止まる。   マイクの人が『じゃあ、セイラさんからお姫様に一言!3・2・1ー。』と言ってセイラさんにマイクを向ける。 「俺の為のシャンパンじゃないでーす。」苦笑いでそう応えるセイラさんの後に、梨那がマイクを奪って「セイラの為じゃないでー!」と、無邪気な笑顔で応えていた。 氷の中に入っていたボトルが取り出されて、丁寧に水滴を拭き取られる。 それを高く掲げながら『それじゃあ、いきますよ!3・2・1ー!』と全員でカウントダウンすると。 親指で押されたコルクは“ポンッ”という大きな音を立てて、天井の方へ飛んでいった。
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