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私は生きた。長い時間を。時代を。世界を。
生きて、生きて、生きて。気付いたら私は後ろ足で立っていた。
前足はよくヒトが私の頭を撫でていた、手というものになっていた。
二つに割れた尻尾と耳はかろうじて残っていた。しかしそれは、どうにも今の姿には余分なものに思えた。
そうか、私は猫じゃなくなったんだ。
なら、何なんだろう。
「おい、化け物」
そう呼ばれた。ヒトが私を見ていた。気味が悪そうに私を見ていた。
私は理解した。
ここは、生きることは出来ないと。
「……私を飼ってください」
こうでもしないと生きることが出来ないと。
生きるためには、仕方ない。
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