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とある平日。
町の中央広場。
晴れた空の下で。
口をぽっかりと空けたままのその青年はぐうぐうと寝息をたてていた。
白いマントに青色のローブを着ている。
この青年は魔導師の格好をしていた。
「…もう~食べきれないよ~うふふ」
寝言まで言っている。
「ねえねえあの人、お仕事何やってるのかなあ?」
広間で遊んでいたあどけない少女が尋ねると、母親は小さなその手が指差すのをやめさせる。
そしてたしなめるように言った。
「人を指差しちゃいけません。
それに、人には知られたくない事情もあるのよ。
さあ、あっちで遊びましょう。」
不思議そうにしていた娘を連れて、母親はどこかへ行ってしまう。
そんな誰も寄り付こうとしない哀れな青年の様子を一人、鷹のような目で物陰から熱心に見つめる男がいた。
立派な宝玉が先っちょにはめ込まれた高そうな杖には精巧に創られた鳥や竜等の金属の飾りが数珠繋ぎになっており、緑色のローブを着たその格好はいかにも名のある魔法使いといった感じだ。
「君、すまない。
目を覚ましてくれ。」
そう告げた男は、いきなりパコンと寝ている青年の頭を叩く。「え?何?ごはん?」
頭を小突かれた青年は目を覚ます。
「ルーズ・フォンバルトだな。」
「え?
ああ、そうだけど、あんた、俺になんか用か?」
「そうか」
一言そういうと呪文を唱える
「風の精霊よ。力をかしたまえ。クイックムーブメント」
魔法使い風の男が呪文を唱えると二人をまばゆい光りが包みこみ、次の瞬間二人とも姿を消してしまった。
町の人々は突然人が忽然と姿を消した事に動揺してざわめいていた。
ところかわってここは人気の全くない荒れ果てた岩場…ここに問題の二人はいた。
「え?なに?
…えっちょっと…まさか変な事考えてる?
ねえ?」
半笑いで青年が魔法使い男に尋ねた。
「貴様がどういう意味で聞いているかは、知ったこっちゃないが…恐らく変な事ではない…勇者よ」
「え…?
一応、俺、魔導師なんですけど…人違いじゃありません?」
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