二人と一人と脱獄ルート

2/7
前へ
/16ページ
次へ
 今まで、あまり病気という病気をしたことがないシオンには、頭痛、というものは縁遠いものだった。  だからだろうか、ひどく、切ない。  階段の半ばで思わず立ち止まったシオンは、現実逃避したい頭でそう考えていた。 そして、口にだした。 「なんでお前ら……増殖してんだ?」 「え、第一声がそれ?」 「おいすー。あんたが牢番さん?オレ、ヒース。よろしくな~」  報告は、なかったはずだ。 囚人が増えるなんて、シオンは聞いていない。  シオンは青年の隣の牢で、邪気のない、けれどもどこか殺伐とした雰囲気を醸し出しているヒースに目をやった。 食えない笑みを浮かべたその男は、何故だか同情するような目でシオンを見ている。 そして、言った。 「今まで一人でこいつの世話してたんだろ?大変だよな」 「…………お気遣い傷み入ります」 シオンが万感の思いを込めて言うと、ヒースが笑う。 それがおもしろくない青年は、頬杖をつきつつ乾いた笑みを浮かべた。 「はは、殺すよ」 殺気が膨れ上がる。 けれどもそれは不意に消滅した。 代わりに、威圧感。 「今のおまえには無理だ」  思わず身震いするような凄絶な笑みを浮かべたヒースがいた。 「いやだなぁ、あんまりつれないこと言うなよ、ヒース。俺と君の仲だろう?」  髪をまとめながら青年がウインクすると、ヒースは嫌そうに眉根を寄せた。 「こんなしょっぱすぎる関係は嫌だ。人間と関係持つならもっと甘いのがいい。なあ?」 同意を求められたシオンは小さく頷く。 青年は残念そうにため息をついた。 .
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加