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今まで、あまり病気という病気をしたことがないシオンには、頭痛、というものは縁遠いものだった。
だからだろうか、ひどく、切ない。
階段の半ばで思わず立ち止まったシオンは、現実逃避したい頭でそう考えていた。
そして、口にだした。
「なんでお前ら……増殖してんだ?」
「え、第一声がそれ?」
「おいすー。あんたが牢番さん?オレ、ヒース。よろしくな~」
報告は、なかったはずだ。
囚人が増えるなんて、シオンは聞いていない。
シオンは青年の隣の牢で、邪気のない、けれどもどこか殺伐とした雰囲気を醸し出しているヒースに目をやった。
食えない笑みを浮かべたその男は、何故だか同情するような目でシオンを見ている。
そして、言った。
「今まで一人でこいつの世話してたんだろ?大変だよな」
「…………お気遣い傷み入ります」
シオンが万感の思いを込めて言うと、ヒースが笑う。
それがおもしろくない青年は、頬杖をつきつつ乾いた笑みを浮かべた。
「はは、殺すよ」
殺気が膨れ上がる。
けれどもそれは不意に消滅した。
代わりに、威圧感。
「今のおまえには無理だ」
思わず身震いするような凄絶な笑みを浮かべたヒースがいた。
「いやだなぁ、あんまりつれないこと言うなよ、ヒース。俺と君の仲だろう?」
髪をまとめながら青年がウインクすると、ヒースは嫌そうに眉根を寄せた。
「こんなしょっぱすぎる関係は嫌だ。人間と関係持つならもっと甘いのがいい。なあ?」
同意を求められたシオンは小さく頷く。
青年は残念そうにため息をついた。
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