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「なぁ。まさかこの会話を誰かにバラしたりしないよなぁ……?」
最初に静寂を破ったのは青年だった。
口調が変わっている。
正直言って、怖い。
「俺には、脱獄を止める義務がある」
勇気を振り絞って言うと、今度はヒースの無言の威嚇。
後に、一転して猫なで声を出した。
「まぁ、そりゃそうだな。ぶっちゃけオレらにとって脱獄ルートは一杯あるが……一番楽なやつを邪魔されるのはいただけねぇなぁ」
腐っても犯罪者。
威圧感が半端ない。
あ、犯罪者だから元々腐ってるのか?
なんてくだらないことを考えつつ、シオンは無意識に剣の柄を握っていた。
「……てまあ、牢屋番脅してもしょーがねーか。どっちにしろ邪魔しようったって簡単に出来ねぇしな。脅して悪かった。詫びにこいつの名前を教えてやるよ。どうせ名乗ってないんだろ?」
「あ、ヒース、君は客を売るのか!」
青年のツッコミもなんのその。
ヒースは内心冷や汗を拭うシオンを見透かしたように笑った。
「……それは、是非知りたいが……。今のをチャラにする気はねぇぞ」
「構わねぇよ」
ヒースはうっそりと笑うと青年が止める前に口を開いた。
「キトン、だ。そいつの名前。それも偽名だが、その名前で調べれば余罪がわんさか出てくるぞ。そいつを死刑にできるようなやつも、な」
「死刑……?」
シオンは思わず呟いた。
え、この食い逃げ野郎がなんだって……?
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