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「はあ……。今日もまたおまえと二人か」
尋問を諦めて呟く。
それに少々ムカッと来たのか、青年は真顔になった。
「やだなあ、そんな嬉しそうにいうなよー。期待しちゃうゾ」
「鳥肌たった!鳥肌たった!」
わざとらしい言い方だった。
だが、青年の言葉に本気で震えたシオンに青年は笑う。
そして食器を下げようと伸ばしたシオンの手を、素早く、かつ力強く握った。
「い゙っ……!」
思わず呻き声をあげたシオンに構わず、青年は見た目からは思いも寄らない力でシオンを引き寄せる。
食事を入れるための小さな入り口ではなかったなら、そのまま牢屋の中に引き込まれていたくらいの力だった。
「んー……」
青年はシオンの手を軽く握ったり引っ張ったりしていたが、ややあってパッとその手を離す。
それからもう用はないとばかりにどこからともなく手紙を取り出してその封を切った。
「……なんなんだおまえ。って、おまえ!それ手紙!何でもっていやがる!?」
罪人は外との接触を断たれるのが普通である。
それから身体検査もあるために、シオンが認めていないものは持ち込めない。
はずだ。
少なくともシオンは未開封の手紙の存在は知らない。身体検査は全裸に剥いて行うために、隠し持っていたことも有り得ない。
赤くなった手首をさすりながら、シオンは思わず青年を指さしていた。
が、対する青年はにっこりと悪戯っぽく笑っただけだった。
それからシオンには目もくれずにその手紙を読み始める。
「おい!おまえ!プー太郎!!」
途端に青年が吹き出した。
そのままケタケタと笑い出す。
「……ホントなんなんだおまえ、気持ち悪い……」
「だ、だってプー太郎!プー太郎!! プー太郎はないよ!だってプー太郎だよ!?」
「おまえの名前なんだろう!?」
今日もシオンの苦労は尽きそうにないようだった。
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