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ようやく青年の笑いの波が去った頃には、シオンはすっかりとへそを曲げていた。
「くそっ。ムカつく」
「ごめんごめん。君がかわいくてつい」
もはや牢屋番と囚人の会話ではない。
「おまえ……」
「あ、俺の手紙のこと聞きたいんだっけ?え、なに?俺の私生活気になるの?気になっちゃう感じ?もー照れるな!」
シオンの言葉をさらりと遮る。
そんな青年に、シオンは真顔で言葉を返した。
「あぁ、すげー気になる。教えてくれるのか……?」
「っえ」
一瞬、青年の表情が固まった。
「……え、なにその間」
「いや、いつもより素直だなぁって。なんかあったの?」
青年が一転して心配そうな表情を浮かべた。
どうやら本気で驚いたらしい。
「何もねぇけど、一週間おまえと暮らしてると、色々悟る」
苦々しい顔でそう述べたシオンに、青年は微笑んだ。
相手のペースに巻き込まれないよう、けれども乗りながら話す。
一週間で悟った青年との付き合い方である。
しかし青年は無邪気な笑顔のままその斜め上の返事を返してきた。
「愛が深まったんだねー!」
「っ!何でだよ!気色わりぃ」
シオンはがくりとずっこけた。
「えー。俺のことが気になるから色々聞いてきてるのかと思ってたのに」
にやにやと笑いながら青年は手紙をつまんだ。
まだまだ、シオンでは勝つには難しいらしい。
やはり、手ごわい。
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