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シオンが悶々と考えていると、熱い視線を感じた。
みると、青年が真面目な顔でシオンを熱っぽく見つめている。
「な、なんだよ」
気味が、むしろ気色悪いその視線にやや及び腰になってシオンが問うと、青年はふっと頬をゆるませた。
「なんなら、俺が相手になってあげようか?自分でいうのもなんだけど、そこら辺の女の子達より綺麗な自信、あるよ?」
確かに、この青年のようにふんわりとした薄茶の髪に碧玉の瞳、陶磁器のような滑らかな肌を持つヒトもそうそういまい。
女性の格好をして声をもう少し中性的にすれば女性にも見えるだろう。
シオンは思わずまじまじと青年を見つめ――そしてふと我に返って顔を真っ赤にした。
わめくように、叫ぶ。
「な、な、な……っ!おおお俺にそっちの趣味はねぇ!! お前なんかに慰めてもらわなきゃいけないほど、俺は落ちぶれちゃいねぇぞ!」
返事はない。
訝しんでみると、青年は無言のまま肩をふるわせていた。
どうやら笑っているらしい。
「て、てめ!なに笑ってやがる」
一気に恥ずかしさが押し寄せてくる。
赤くなった顔を誤魔化すように叫ぶと、堪えきれなくなったのかついに青年は声を上げて笑い出した。
そのまま肩をゆすり、がっくりとうなだれた体勢のまま地面に拳を打ちつけて笑っている。
「てめっ……」
「ひっ……し!必死!シオン、必……死!!」
そのまま笑いのツボにはまった青年は、苦しげに身をよじった。
「くっ……!生まれて初めて純粋な殺意を覚えた」
「あ、新しい自分に出会えて……良かったね、っシオン。初めての、相手が俺で、っく、すごく…………嬉しいです。ふふっ」
「黙れ死ね」
シオンは、その日改めて青年の度を超したウザさと、扱いの大変さをその身に刻み込んだという。
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