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「信じらんないっ!」
怒りのこもった捨て台詞を吐きながら、女は俺の前から走り去った。
カンカンカン…とリズムよく階段を駆け降りる足音だけが響いていた。
「いってぇ………。頭も顔も痛ぇ。」
俺は新たに叩かれた右頬を擦りながら、ゴロンとその場に寝転んで目を閉じた。
………………
「……おいっ…おいっユウッ!」
遠くから呼ばれる声に、俺はうっすらと目を開けた。
俺のすぐ傍でしゃがみ込む、太一の姿が目に入る。
「……あれ、俺、もしかしてスゲー寝てた?」
「寝てた寝てた。もぅ放課後だし。」
太一が差し出した左手に掴まり、俺は一気に起き上がった。
「はぁーよく寝た。」
起き上がると同時に、俺は思い切り伸びをした。
「ユウ………、お前また女に手ぇ出したとか?」
「は?何で解んの?ってか、正確に言うと未遂で終わったんだけど。」
「だろうな。」
俺の間の抜けたセリフに、呆れた返事をしながら、太一が自分の頬を指差した。
「……ここ。真っ赤な手形ついてる。」
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