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私は頬の上にある結ちゃんの手に自分の手を重ねて、目を閉じた。
今までは、あの家族の中で、結ちゃんだけが、私にこの優しい手を差し延べてくれた。
辛い中、耐え続けられたのは、貴方がいたからに他ならない。
しかし、貴方の心の悲鳴を聞いた今、私は貴方の傍にはいられない。
これ以上、貴方の優しい手に縋って泣くわけにはいかない。
私は、貴方とは別の、温かくて大きな手を取ってしまったから…
私は意を決して、目を開ける。
「結ちゃん…
あたしは、結ちゃんがあたしに求めているものをあげられない。
あたしは、あたしが見つけたものを大切にしていくから…
結ちゃんには、きっとあたしと違う、結ちゃんだけのかけがえないものを見つけ出せると、あたしは信じてる」
どうか…どうか…
結ちゃんにも、貴方のような優しい手が差し延べてくれますように…
私は、結ちゃんの手から、そっと離れた。
結ちゃんは、私に触れていた手をぐっと握りしめ、悲しげに微笑みながら、コクンと一つ頷いた。
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