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そして、私は綾ちゃんへと近づいた。綾ちゃんにも、きちんと伝えるために…
「綾ちゃん…
綾ちゃんは、あたしからいろんな物を奪ったかもしれない。
だけどね…あたしは結局、綾ちゃんに何にもあげてなかったの」
「何…言ってるの…?」
「綾ちゃん…ごめんね?
将さんの言う通り、あたしは綾ちゃんに教えてあげるべきだった。
怯えてばかりいずに、あたしの本当の気持ちをぶつけていれば…
綾ちゃんは、もっと早く自分の間違いに気がついていたかもしれない。こんなに傷つかなかったかもしれない」
「文ちゃん…意味がわからない…」
綾ちゃんは、私の漠然とした話に顔をしかめる。
「綾ちゃん…あたしの心は、確かに壊れかけた。
でも、もう大丈夫。
あたしは、ずっと欲しくて堪らなかったもの…かけがえのないものを見つけたから、大丈夫なの。
次は、綾ちゃんの番。
綾ちゃんには何があるの?
嘘をついたり、人を傷つけたりして、欲しいものは手に入った?
そこまでして、本当に欲しかったものは何?」
「本当に欲しかったもの…」
綾ちゃんは、小さな声で呟いた。
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