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「文ちゃんは…もう、実家には帰って来ないの?」
綾乃ちゃんが、遠慮がちに怖ず怖ずと聞いてきた。
「うん。必要に迫られない限りは帰らないつもり。
一度、お父さんとお母さんに、きちんと話しに行かなくちゃいけないけどね」
「そう…」
私がはっきりそう言うと、綾ちゃんはちょっと俯き加減になった。
すると、結ちゃんが綾ちゃんの頭にポンと手を乗せて
「文ちゃんは、ちょっと会わないうちに、随分逞しくなったんだね。
もう俺の知ってる文ちゃんじゃないみたい。
俺よりも大人になっちゃった。
顔は童顔のままだけどね?」
と、おどけて言った。
うッ!
童顔って人が気にしてることを…
私はちょっと口を尖らせながら、結ちゃんを見ると、さっきまでの悲しげな笑顔ではなく、さっぱりした表情で笑っていた。
私もつられて、つい笑った。
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