縺れた糸

16/19
前へ
/573ページ
次へ
「文ちゃんは…もう、実家には帰って来ないの?」 綾乃ちゃんが、遠慮がちに怖ず怖ずと聞いてきた。 「うん。必要に迫られない限りは帰らないつもり。 一度、お父さんとお母さんに、きちんと話しに行かなくちゃいけないけどね」 「そう…」 私がはっきりそう言うと、綾ちゃんはちょっと俯き加減になった。 すると、結ちゃんが綾ちゃんの頭にポンと手を乗せて 「文ちゃんは、ちょっと会わないうちに、随分逞しくなったんだね。 もう俺の知ってる文ちゃんじゃないみたい。 俺よりも大人になっちゃった。 顔は童顔のままだけどね?」 と、おどけて言った。 うッ! 童顔って人が気にしてることを… 私はちょっと口を尖らせながら、結ちゃんを見ると、さっきまでの悲しげな笑顔ではなく、さっぱりした表情で笑っていた。 私もつられて、つい笑った。 ・
/573ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26265人が本棚に入れています
本棚に追加