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私がやれやれと腰を上げ制服のスカートを叩いて立ち上がれば、周りは奇妙なモノを見るような目で私に視線を向ける。
「か、変わった……衣であるな」
「……え?」
「しかし、ふむ、綺麗な足だ」
「!?」
目の前の『カッちゃん』というらしい男がポツリと言った呟きにハッとして、私は周りの視線が足に注がれていることに気が付いた。
……うわ。
な、何だか照れ臭いんだけど!
綺麗だなんて初めて言われた…。
心なしか、ポンと顔が赤くなる。
「あ、もしかしたら……」
「?」
そしてその人は急にその優しそうな表情を歪めた。
「お腹、空いているのではないのか?それで、倒れたのでは…」
「え」
あの、違いますけど。
「記憶が無いらしいぜ」
暴走一歩手前な彼に男が言うと、目をかっぴらいで再度私を食い入るように見つめだす。
「な、なんてことだ!女一人でさぞかし苦しかっただろう!寂しかったであろう!」
「い、いや、その…」
「家にも帰れず途方に暮れていたのではないか!?それなら、ここに記憶が戻るまで住むと良い!」
「へ?」
「なっ!」
「ちょっ!近藤さん!?こんな泥棒みたいな子置くんですか!?」
「……」
住んで良い、と?
私まで信じられない発言に驚いた。
この人は、知らない人をあっさり泊めてしまうほど心が広いのだろうか?
でも……
「か、考えておきます」
素直に受け入れられない自分がいた。
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