2020.5.8「それが、どうした?」

1/2

158人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ

2020.5.8「それが、どうした?」

(参ったな……) 肩も、肘も、手首さえ動かすたびに骨々が軋むような鈍い音を立てる。 魔帝貴族と呼ばれるレイヴンを退け、しばしの小康状態の中。 (指先の感覚も違和感だらけだ) 隊長たる自分が戦場に立たなければ士気は下がる。 (けれど、こんな状態で果たして戦場に戻れるのか……) 確かめるように、何度も掌を握りしめては開き、ダメージの蓄積を確認する。 その時だった。 「巌槻隊長!!」 息を切らしながら駆け込んでくる伝令。 「……どうした?」 傷の手当てをしながら、答える。 「て、敵襲です……!!」 敬礼するその手を震わせながら、何かを押し殺すように叫ぶ。 「……敵襲?」 「前方より……”青碧のカイン”と思われる部隊が接近中とのこと……!!」 今しがた戦いを終えた人間に対し、伝える言伝としてはあまりにも辛く酷い、悪夢と呼べる報せ。 「そうか……」 分かった、と応急処置が終わったばかりの身体を軍服で包む。  
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加