158人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
「分かったって……そのお身体でまさか……?」
その先の言葉を飲み込む隊士。
「敵が迫っているんだろう?仕方がない」
俺は当たり前のように袖を通し、襟を正す。
「怪我をなされているんですよね……?」
俺の体中に撒かれる包帯を見て、彼はいう。
「だから?」
そういって隊服のボタンを留め始める。
しかし怪我のせいか、覚束くことない指の動き。
「ゆ、指だって満足に動いてないのに……?」
新しく撒かれた包帯からは、既に血が滲み始めている。
「それで?」
あくまで冷静に、手を何度か握りしめ感覚を確かめ、ボタンの続きを留めていく。
「そのままじゃ……死ににいくような」
――――それが、どうした?
覚悟などとうの昔にできている。
当たり前だ。
そういったものの先に、今の自分がいるのだから。
「た、隊長!?」
「今、退けばここから攻め込まれるかもしれない。他から応援を呼べば、そこから攻め込まれるかもしれない」
ならば、今この場にある戦力で挑むしか方法はない。
「”始まり”の者とはいえ、所詮は人間なのだろう?」
ならば、我々人間が勝てない道理など存在しない。
「帝位こそなくとも、ここは俺が守れと命じられた場所」
必ず守り切って見せる。
極北の巨人と呼ばれたのだ。
その名の通り、できるだけ大きな背を向けながら、俺は目の前の脅威へと立ち向かっていった。
最初のコメントを投稿しよう!