2020.5.8「それが、どうした?」

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「分かったって……そのお身体でまさか……?」 その先の言葉を飲み込む隊士。 「敵が迫っているんだろう?仕方がない」 俺は当たり前のように袖を通し、襟を正す。 「怪我をなされているんですよね……?」 俺の体中に撒かれる包帯を見て、彼はいう。 「だから?」 そういって隊服のボタンを留め始める。 しかし怪我のせいか、覚束くことない指の動き。 「ゆ、指だって満足に動いてないのに……?」 新しく撒かれた包帯からは、既に血が滲み始めている。 「それで?」 あくまで冷静に、手を何度か握りしめ感覚を確かめ、ボタンの続きを留めていく。 「そのままじゃ……死ににいくような」 ――――それが、どうした? 覚悟などとうの昔にできている。 当たり前だ。 そういったものの先に、今の自分がいるのだから。 「た、隊長!?」 「今、退けばここから攻め込まれるかもしれない。他から応援を呼べば、そこから攻め込まれるかもしれない」 ならば、今この場にある戦力で挑むしか方法はない。 「”始まり”の者とはいえ、所詮は人間なのだろう?」 ならば、我々人間が勝てない道理など存在しない。 「帝位こそなくとも、ここは俺が守れと命じられた場所」 必ず守り切って見せる。 極北の巨人と呼ばれたのだ。 その名の通り、できるだけ大きな背を向けながら、俺は目の前の脅威へと立ち向かっていった。  
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