2020.5.9『明日への、退路』

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「心配するな、白神」 振り返らず、迫りくる敵に対しゆっくりと構えるレイジさん。 「俺はもともと、存在するはずのない九条……九番目の人間なんだ」 だから今更、死んだところでどうともない。 そういっているような気がして。 「ダメだ、そんなの!?間違ってる……!!!!」 僕はまた叫んでしまう。 「行くぞ、白神」 再度、制止する久世隊長。 「嫌だ!!僕もココに残ります!!」 「行くんだ!!」 がしり、と強く腕を掴まれ、引っ張られる。 「いいか、俺たち騎士は死ぬことも任務のうちに入ってる」 これ以上なく強い力。 「そんな!?」 「あるんだよ」 ――――仲間の命を守る為のみ、自らの命を犠牲にする戦闘を許可する。 帝都救世軍規約に合致した正しい行動。 「なあ、九条」 「何だ?」 「礼は、また今度」 「気にするな。俺は”極秘任務”をこなしていたに過ぎない」 「レイジさん……!!」 「泣いてる暇があれば一歩でも遠くに退避するんだな」 それに、 「これは、敗走なんかじゃない」 希望を紡ぐ道。 「明日への退路だ」 明日(未来)を守る為に戦うだけのこと。 そう、今までと変わることなく。 ドドドドドドドドドド。 酷く重く、不気味で奇妙。 更に強く鳴り響き近づく、音と揺れ。 そんなすぐそこまきている脅威に対し決して臆することなく。 「一条家八翼が一人、九条レイジ」 これより第九部隊の戦線離脱を援護する!! そういって、千の闇の中へとその姿を溶かしていった。  
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