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士官学校での成績は確かに悪い方ではなかった。
600人いる騎士候補生の中、たった12しかない副補佐官候補生として特別クラスに配属され、そこでも上位6士官として選ばれた私。
けれど、それでも他に適した人間がいたのではないかとも思う。
「他にも適任がいたのではないかと、思っています……」
副補佐官を選ぶのは元帥でも士官学校長官でもなく帝位にいる七人。
「適任?」
熱く、芯の強い、真っ直ぐな眼で真っ直ぐ生きている炎帝。
そして、ただ好きな人が騎士を目指し、その人を守りたいと思って追いかけるように騎士を目指してここまできた私。
私は、こんなにも前を真っ直ぐに何かを見据えることなどできない。
いつも、彼を失うことが嫌で堪らなく怖くて仕方がない。
好きな人が目指すことをなぞるように、同じことを目指すことしかできない自分。
ただ優秀だっただけでここまでこれただけの人間。
「何故、そう思う?」
ただ真っ直ぐ、遠くを見つめながら返す久城隊長。
「私は……守るだけの人間です。誰もが傷つかないように、自分の力を……使うことしかできません」
隊長のように先陣を切る火力もない。
戦うことができない、ただ守る為だけの力。
「守るだけ?同じじゃないか」
そういって笑う。
「俺も守りたいんだ」
――――帝都にいる全員を。
「その為の手段が、これ(剣)しかないだけだけさ」
それはナツキも同じだろう?
「俺が矛で、お前が盾。誰かを守る為に、それぞれ違う手段でただ戦い続けてるだけじゃないか」
まるで何も矛盾などないように。
それが一対の力なのだと言わんばかりに。
「俺の副補佐官は間違いなくナツキで適任だよ」
隊長と副補佐官。
矛と盾の関係がここで初めて築かれた。
これがその、最初の日。
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