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2023.12.26
『最後の砦』
「どう思う?」
戦況はただただ果てしなく続き、その終わりの見通しはない。
悪くなっているのか、良くなっているのかも分からない第一線。
「その問いが撤退するのか、しないのかであれば、私はしない方を選びます」
今までの戦闘によって汚れた頬を手で拭いながら、これからの戦場を見据える。
「誰もが騎士になったその日、胸に秘めていたでしょう……」
すべての人間を守る、と。
「今、後ろを向けば、その気持ちに背を向けることになります」
今まで歩いてきた道が無駄になります。
「例え死ぬことになったとしても、無意味な行為となってしまったとしても」
私は、この道を歩いていたい。
「私が壁となれば誰か一人でも多く救われる、そんな存在でいたい」
誰かの為、何かの為、そんな最後の――――。
「砦でいたいのです」
背筋は伸び、真っ直ぐと高く、これ以上なく澄んだ目をして。
彼女はそういってのけた。
「……分かった」
だから応える。
「なろう」
一人じゃなく、千人。一日じゃなく千年。
「そんな平和を築く為の礎となる――」
最後の砦に。
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