落とされ-序-

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 いつの間に眠っていたんだ……  身体を起こすと、テーブルに突っ伏して眠ってしまったらしく、やけに腰が痛かった。 思いっきり体を伸ばしてみると、身体の節々が、折れた木の枝の様な悲鳴をあげる。  窓を開け、早朝の冷たい空気を肺にこれでもかと言うくらい詰め込んだ。 目の前では、太陽が半分顔を覗かせている。 そこまで出てくるなら、さっさと出てこいよ。 恥ずかしがらなくても良いのにな。 冷たい酸素を詰め込んだせいか、出てくる二酸化炭素は、いやに生暖く感じる。  時計を見ると、時刻は五時を少し過ぎていた。  ……きっと昨日のメールは夢だよな? そうさ、たちの悪い悪夢に決まってる。  どうやら起動したまま寝てしまった様で、小さなテーブルの上のパソコンは絶賛稼働中だった。 パソコンの前に座り、鳥さんを二回小突くと、眠りについていたのだろうか、子供の寝起きのように起動が遅かった。  表示される画面に、思わず大きなため息をついてしまう。 喰蝕語からのメールは、そこにいた。  わざわざこんなでっかい荷物を持ってきやがって。 と、鳥さんに悪態をつくが、彼は顔色一つ変えない。  今から寝たら確実に学校は遅刻だよなぁ。……仕方ねぇ、調べてみっか。 大手検索サイトで喰蝕語を調べてみると、想像以上に検索結果が出てきた。 その数、約12000件。 おいおい。いつの間にこいつはこんな大物役者になっちまったんだ?涙腺が崩壊しそうだな、まったく。  とりあえず、検索結果の上から順にサイトを駆け回ってみたものの、めぼしい情報は手に入れることは出来なかった。 「神出鬼没のサイト、か……こんなん、打つ手無しじゃねえかよ」  あのメールを読む限りでは、一週間後に公開予定と書かれているだけで、誰が死ぬとかは書いていなかったが…… でもまぁ、大抵は死ぬんだよな……都市伝説って……  考えれば考えるほど、昨晩感動的なKO劇をみせたパニック勇気が、今にもリングに上がりそうだった。 立つな!立つんじゃない!俺!  インターネットを駆け回り、一人ボクシングごっこをしていると、いつの間にか時刻は六時三十分にタイムスリップしていた。 「朝から何をしとるんだ、俺は……」  とりあえず、風呂に入って頭をすっきさせようか。 頭を乱暴にかきまわして、のろのろと部屋を出た。
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