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快晴と言えど、まだ五月だ。
風は心地よい温度で、朝日の降り注ぐ道を吹き抜けて行く。
住宅地を歩く制服の俺は、誰がどうみても世間一般の男子高校生だろう。
少なくとも新人都市伝説からの不幸のメールにおびえる、ホラー好き男子高校生には見えてはいない筈だ。
通っている高校までは徒歩圏内だから、バスと電車の混雑や遅延に悩まされることはない。
そんな俺が、まさか都市伝説に悩まされることになるとは。神様からの嫌がらせとしか思えない。
しばらく何も考えずに歩いていると、後ろからやけに明るい声が俺を呼び止めた。
「勇気ーっどーした!背中曲がってんぞっ」
俺を呼び止めたそいつは、吹き抜ける五月の風に負けず劣らずの爽やかな笑顔を向けてきた。
こいつの名前は
西塔 純(さいとう じゅん)高校のクラスメートで最初に出来た友達、成績優秀スポーツ万能おまけにイケメンときたもんだ。
おそらく前世は少女漫画の主人公だったのだろう。
紙に染込んだインクからやけに出世したもんだなぁ。
「笑う門には福来る だろ!」
こいつの隣にいると爽やかパワーでこっちまで明るくなっちまう。
仲間内でもムードメイカーとして人気を博している。
純も俺と同じく都市伝説やホラーを好んでいて、まぁこいつと友達になったきっかけは放課後一人でこっくりさんをやろうとしているのを見ていたからなんだが。
今思えば滑稽な光景だったな、写真撮っとけば良かった。
……とまぁ、そんな所々残念な一面もあるからこそ、俺は純を信頼していた。
純なら少しは喰蝕語について知っているんじゃないか?
パソコンでの情報捜索がダメとなると、頼みの綱と言えばこいつしかいなかった。
「実は昨日の話なんだけどさ……」
俺が昨晩の出来事を説明している間、終始純は目を輝かせていた。
「いいなー!」
話終えた後の第一声がこれだ
こいつやっぱり頭湧いてるんじゃないか……
レアな体験だレアな体験だ!と、子供の様なリアクションをとられては怒るに怒れないだろうが。
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