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「なにか知ってること、ないか?」
「うーん……話は最近聞くけど、俺も詳しいことは分からないんだよな……」
「……そうか」
最後の頼みの綱もダメ、か
昨日からため息しかついていない気がするな。
「あ、でも」
と、純は手のひらを叩く古典的なリアクションをしてみせた。
お前の頭の上に今にも電球が浮かんで見えそうだよ。
「あの子ならしってるかも!」
「あの子?」
「俺らと同じ学年のホラー研究同好会の子だよ!」
「うちの学校にそんな素敵部活があったのか」
「部活じゃなくて同好会、な。そこの会長なんだけど、確か名前は……花宮楓だったかな?」
「花……宮……?」
体温が一気に上がった。
頭の中では喰蝕語からのメールに書かれていた名前が浮かび上がってくる。
”花宮”京子。
”花宮”楓。
このタイミングで、これが偶然だとでもいうのか?
もしも運命でなく偶然だったとしたら、この先一生不幸が続いても可笑しくないほどの幸運だ。
色濃く立ちこめていた一寸先の闇に、微かな光が射した気がした。
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