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――放課後を告げるチャイムが、校内に鳴り響く。
帰宅を許された学生達の歓喜の声と、主の帰宅を悲観する机達の悲鳴が混ざり合い、さながら交響曲のように、歓喜の歌を歌っていた。
純から、花宮楓について、話を聞いてから、光の速さを越えて、会いに行こうとする俺を、純がとめた。彼が言うには、
『朝から会いに行ったって、時間ないし。放課後の同好会に乗り込む方が得策じゃない?』
とのこと。まぁ、確かにそうかもしれないけどさ、恋は盲目ってやつだよな?恋をしてる訳じゃないが。
純は、放課後の委員会で、遅くなるらしい。俺はクラスの友人と、バカ話をしながら純が戻ってくるのを待っていた。
あ、考えてなかったけど、花宮楓が可愛かったらどうしよう。
いやいや、可愛くたって別に好きになる訳じゃないがな?
いや、でももし吊り橋効果で相手を好きになるって可能性も……!?
……おいおい
生死が掛かってるこの状況で何を考えとるんだ、俺は。
煩悩を振り払い、弁当箱専用と化しているバックを乱暴に背負うと、委員会が終わったらしく、純が教室の入り口に立っていた。
それにしても、奴の立ち姿はモデルにも負けず劣らずだな。
廊下を通る女子たちの注目の的だ。
「で、俺のシンデレラ様はどこにいらっしゃるんだ?」
「体育館裏の倉庫、そこがお姫様のお屋敷だよ」
下らない例え話を交えつつ、お姫様のいらっしゃる倉庫へと向かう。
倉庫のお姫様には、ガラスの靴ははまるのか……
携帯の時計は午後五時。
窓から見える空には、疲れ気味の太陽が、今まさに地球の裏へとご帰宅中だった。
舞踏会には、少し早過ぎるだろうか?
しかし、魔法の時間は、そうそう待ってはくれないだろう。
早過ぎるなんて事は無い筈だ。
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