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――「英明さんが死ぬなんて……」
僕は車を運転しながら、大音量でCDを聴いていた。
チャット会では最年長だった英明さん。38とは思えないほどに活発な人で、年齢差を感じさせないほどにフレンドリーな人だった。もし、死んでなどいなかったら、今日もまたチャットで下らない話をするはずだったのに……
いくらお気に入りのCDを大音量で流した所で、昨晩の報道が頭から離れる訳ではなかった。
そりゃあ、反りが合わないこともあったとはいえ、大切な友人の一人……
いや、兄弟のいない僕にとっては、英明さんは、実の兄のような人だった。
「喰蝕語……か」
それにしても、だ。まさか勇者くんに喰蝕語からの招待状が来るなんて……
狙われるとしたら、真っ先にサイトを見てしまった僕かと思っていたが。
今まさに、僕は都市伝説のお話の中に巻き込まれているんじゃないだろうか?
いや、巻き込まれているなんて言い方はよそう。今まさに、高校生が都市伝説の世界に迷い込んでいる。そして、死人さえ出てしまった。
本人は怯えているに違いない。困った時はお互い様、だ。きっと助け出してみせる。もう、英明さんのような人は出してやるもんか。
駅のすぐ近くにあるパーキングに、車を止める。
「お、あの喫茶店か。……柳に会うのも久々だな」
時刻は午後一時五十五分。
五分前行動か、まずまずだ。
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