落とされ-零-

2/7
前へ
/73ページ
次へ
普通の街の普通の一軒家。 お世辞にも広いとは言えない部屋、青いシーツで一丁前にお洒落を決め込んでいるシングルベット。 部屋の本棚に漫画や映画など、趣味で集めているホラーグッズが並べられていた。  複雑にリズムをとるキーボードは、俺にとっては打楽器の一つで、エンターキーを打つ瞬間がたまらない。  テーブルの横には、別にするわけでもない高校の教材が積み上げられていた。  勉強は苦手だ。 高校受験のために使われていた参考書などは、受験が終わったと同時にゴミ捨て場に置いて来た。 「受験戦争を共にした同志と言えど、今日の味方は明日の敵とでもいおうか」 と、独り言をつぶやいてみる。 ……いや、要するに勉強が嫌いなだけだ。 中学生という幼かった自分も、その日ゴミ捨て場に置いて来た。  高校生に生まれ変わって一ヵ月、髪をギラギラの金色に染めた男を中心としたグループに入れた訳だし。どうやら一人で過ごすことはなくなったようだ。うん、順当順調。 今日も遊びほうけて、カラオケ、ボーリング、焼肉と高校生らしい学校生活を送っている。  午前十二時三十分。  イマイチ慣れていない一日で疲れたわけだが、俺には一日を締めくくる日課があった。 それがホラーサイト『都市伝説 百戦!』のチャット会だ。 このサイトには、トイレの花子さん等の都市伝説から、友達の友達から......というお約束の眉唾都市伝説が多数掲載されている。  小さい頃から都市伝説などホラー作品が好きだった訳で、高校に入る前にこのサイトに行き着いたのは運命だと思っている。  このサイトに出会って以来、俺は毎晩このサイトにアクセスするようになった。 アクセス数はそんなに多い訳ではないが、深夜にもなればこのサイトに設置されている『都市伝説チャット』をする分には程よい人数の、いわゆる”常連”がログインする。  今日は俺を含めて四人いる。 皆、このサイトの新参であった俺に優しく接してくれた常連達だった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加