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それは突然だった、自分以外の人間が一斉にログアウトするなんて初めてだ。
三人で俺を驚かそうとしたのか……いや、ここまで息ぴったりに同時にログアウトできるものだろうか?
サーバーの不具合?
これまでは、そんなことはなかったはずだけど。
……呪い?
心の中に小さく産まれた”恐怖”をすぐに押しつぶした。
喰蝕語なんて、どうせ誰かの作った話だろう。
都市伝説の就職氷河期に、こんな即採用レベルの期待の新人が、現れる筈も無い。
ましてやこんな状況下、俺なんかの為に都市伝説さんが会いに来てくれたって言うのなら、サインをもらって即刻お引き取り願おう。
おちつけおちつけ。
気を紛らわせろ。
あ、ベッドさん!その青いシーツいいセンスしてるね!
おいおい、ギター
お前、なんでそんなに偉そうに座ってんだ?
おちつけおちつけ。
よし、折角だし勉強でもするか!
……だから、落ち着けって。
自分の中の慌てん坊パニック勇気と、冷静沈着クール勇気が葛藤している。
一人喧嘩をしている俺を、都市伝説さんが隣り合わせの現実に引き戻したのは、聞き慣れない電子音だった。
PCの画面を見ると、手紙をくわえた鳥のアイコンが、点滅を繰り返している。
友達に教えてるのは、携帯電話のメールアドレスだ。
PCメールなど、活用した記憶はないはずだったが……
画面上の矢印を、なぜか慎重に動かす。
そして、遠路はるばる手紙を持って来てくれた鳥さんを、二回小突いた。
鳥さん鳥さん。
お願いだから、不幸の手紙とかはやめておくれよ?
二回も小突かれて不機嫌になったのか、鳥さんは口から手紙を吐き捨てた。
-新着メールが一件届いています-
差出人:喰蝕語
件名 :公開予定作品
本文 :主演・明宮 勇気
花宮 京子
公開予定日
五月二十七日
作品名
一つ語 『落とされ』
-END-
「なんだ……これ……」
おいおい鳥さん、こいつは大不幸の手紙じゃないかい?
喰蝕語からのメール?
なんで俺の名前を?
花宮京子って?
公開予定日……丁度一週間後……
一人喧嘩は、慌てん坊パニック勇気の一人勝ち。
高校一年生の春。
ここが、人生のターニングポイントってやつなのか?
五月二十日
午前一時四十八分
公開予定まで
残り一週間。
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