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まず脚に驚いた。
座敷に無造作に横たわってる一本だけの脚に、一つ一つの筋肉がせめぎあいながら息づいている。
「樹齢何百年の幹」。
そう連想させるのに十分な頑丈さと迫力を兼ね備えている。
右足か左足かわからない。
足の指のどれもが均一に大きいのだ。
「やぁどうも」
脚の主が声を出した。
しわがれてはいるが、深くて穏やかな声である。
「お客さんの前で足ぃ投げ出すのは失礼だけんど、おらぁ正座ぁできなくてよ。」
これが「案山子」を営んでいる鳥居覚兵衛さんとの出会いである。
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