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「案山子」という職業の歴史は古い。
一説によると役小角がその秘術を大陸から伝えたとも、安部清明が編み出したとも言われているが、よくはわかっていない。
案山子になるためにはまず片足を切り落とす。
覚兵衛さんの話によると「別に手ぇでも頭でもいいんだけどね」らしいが、さすがに頭はないだろう。
そして切り取った自分の肉体を鳥居家に伝わる秘術でもって秘薬にし、鳥に与える。
そしてその鳥を操り、稲を食べさせなくさせたり害虫を駆除したりして、農家の人達から「謝礼」をもらって生計をたてている。
「気楽なもんさぁ」と覚兵衛さんは言う。
「お百姓さんは一所懸命田んぼで働いてる時に、おらは鳥っこの相手ばしてればいんだもの」と笑う。
覚兵衛さんは前歯がところどころない。
そのせいかどうかわからないが、笑うと乳歯が抜けた子供みたいな顔になる。
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