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「その『秘薬』っていうのを見せて頂けませんか?」
「おぉ。見せて頂けるよ」
そういうと覚兵衛さんはひょいっと立ち上がり、ぴょんぴょん跳ねながら秘薬がある裏庭へと案内してくれた。
その後ろ姿を追いながら「たぶん唐傘お化けがいたらこんな感じに歩くんだろうな」と湧きあがってくるおかしみをぐっと押さえていた。
「ここだぁ」と覚兵衛さんが指したのは、お世辞にも綺麗とは言えない、一言で言えば「ほったて小屋」であった。
無論「鍵」などという秘薬を泥棒から守るものは設置されていない。
中に入ると苦甘ったるい匂いがした。
小児科でもらう薬のような匂いだ。
薄暗い中に目を凝らすと、大人が二三人入れるような大きな樽がどかりと沈黙していた。
覚兵衛さんの話によると、秘薬は毎日与え続けないと意味がないそうである。
「それじゃあ片足じゃあ足りないんじゃないですか?」と僕が尋ねると、「うん」と間の抜けた返事が返ってきた。
「ホントの作り方は自分の体ぁ洗った水ば使うんだけんど、それだと出来上がる間にその案山子が死んでまうくらい時間かかんだわ」
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